2009年10月9日金曜日

09 第3回

測って描く

今回はのテーマは「測る:数値の視覚表現」。おもちゃのかたちそのものではなく、そのおもちゃの動きにまつわる「データ」をモチーフとした視覚表現に挑戦します。
今日も5つのステップを踏んで最終的に作品を作り上げる、というプロセスで進めていきます。

step-1 文字を書く

本題の表現に入る前に、プチ・レタリングの時間を設けました。

▲教科書の中の一行を、文字のかたちを見ながら3段階の大きさで書き分ける

文字も表現であり、表現の要素である、という意識を持ってもらうためです。せっかく表現を頑張っても説明のために入れる文字が「ダメダメ」では話にならないからね。手描き表現だからといって、文字のレイアウトや表示がテキトウでよい訳はないのです。
パソコンやグラフィックソフトがなくてもデザインはできる!
「画面に対して可読性を保持した最小の文字サイズ」をコントロールすることが、カッコいいレイアウトの鍵ですよ。

step-2 おもちゃの動きを測る

さて、ここからが本題です。おもちゃの動きをデータ化して表にまとめるのが、このプロセスでの活動。思いっきり遊んでよいけれど、そのおもちゃの動きを観察しながら、「動き」にまつわるさまざまなデータを抽出しなさい、というミッションでしたが、教室内はスゴいことになってしまった。

データといっても高度な計測機器はないので、用意してきた定規、メジャー、秤、分度器やストップウォッチなどを駆使して、寸法、距離、時間、重さ、速さ、強さ、タイミング、回数、など様々な視点からデータを集めました。どんな視点や方法でならそのおもちゃならではのデータを得られるか、それを考えて実践することが今日の一番大事なステップなのです。

ところで、別に普段遊べばいいのに、授業の中で遊べると嬉しいのはなぜだろう?

step-3 データの視覚化

このステップは、数値を図形に置き換えることによって、そのオモチャの動きの特徴を表現する練習です。得られたデータを直感的に把握できるような視覚表現に変換する方法を探ります。

矩形、円、三角形などの単純な図形を組み合わせて、「量」「数」「比率」などの数値を、長さや面積、グラフやチャートに置き換えていきます。
この表現は、データという実体のないコンテンツに表現によって形を与える、複数のデータの関係性によって全体像を語る、まさにコンテンツデザインの基礎練習となっています。

step-4 作品化

アイデアスケッチの中から、これはイケると思ったものを、A3ケント紙に美しくレイアウトします。

チェックポイントとして、
・どんなオモチャか:表現からそのオモチャらしさが溢れているか?
・どんなデータか:何を現すデータか、直感的に把握できるか?
・それがどうした:そのデータはオモチャの魅力に繋がっているか?
を挙げはしましたが、残念ながら、そこまで作品に盛り込むのは難しかったかな。



限られた時間の中での表現なので、ことば足らずだったり、データの内容と形状の整合性がとれていなかったり。作者にどう気づかせたらよいものか。でも、可能性を感じる作品もいくつかありました。

step-5 振り返り

データの視覚化と言えば、オットー・ノイラート。オーストリアの社会学者だったノイラートは1920年代に、ISOTYPEと呼ばれるピクトグラムを用いた視覚表現によって、統計情報を一般の人でも解釈できる身近なものとして提示しました。現在の公共標識などに使われているピクトグラム、アイコンの原点です。
(くわしくはウェブや書籍で調べてみてくださいね)
今回の制作活動のキーワードは「表」「グラフ」「チャート」。
それぞれの特徴と目的に合わせた表示方法の使い分けを、今日から意識しましょうね。

今日のおまけ

今回は考えながらの作業、作品もちょっと消化不良だったなぁ今回も、受講者と同じ条件で、教員も作品を制作。いやー、今回の課題は結構難しかったかな。少しでも、学生たちに刺激を与えられればよいのだが。

2009年10月2日金曜日

09 第2回

かたちをとらえて描く

いよいよ、今日から実制作の始まりです。
授業の開始前から、学生たちが持ち寄ったおもちゃで、にぎやかしいこと。
今日の演習は5つのステップを順に進めていく構成で、なんとか時間内に結果を出す、という目標を立てて進めました。

step-1 線で描く、面で描く、点で描く

線、面、点で描く練習まずはウォーミングアップ。A3スケッチブックに、マーカーなどで線をたくさん描いてみます。姿勢を正し、呼吸を整え、手先だけなくカラダ全体を使って気持ちよく。水平、垂直、円、波形と、いろいろな線を描いてみます。次はそれらの線の交差によって生まれた様々な形状を塗りつぶしてみます。丁寧に塗りつぶすというよりも、リズミカルに線で埋めていく、というイメージです。さらに、ドットを使って面の濃淡を表現してみます。点と点の間隔をコントロールすることで、濃淡だけでなく面の歪みも表現できます。
こんな単純な表現方法でも、研ぎすませていけば人を感動させる表現を生み出すことが出来るのです。

step-2 観察しながら描く

さて、それでは点、線、面を組み合わせて、用意したおもちゃのカタチを描いてみましょう。まずは、画面一杯に大きく。いろんな角度から。つぎは、そのもちゃの特徴的な部分を拡大して。

現物をしっかり見て描く。当たり前のことですね。
ところで立体物を平面上に表現する上で欠かせない技法が、遠近法です。透視図法とか、習いましたよね。これも応用してください。


step-3 技法を用いて描く

ここで言う技法とは、立体を平面に置き換える時によく用いられる、パターン化された表現方法のことです。

a. シルエット:そのものの全体が把握できるような角度からの輪郭線のみを捕らえた表現。光を当てた時に壁に映るそのモノの影。
b. ハイライトとシャドウ:モノの表面の凹凸に注目し、ある方向からの光が当たっている部分と影になる部分の2階調による表現。光の当たる角度と、それをどこから見るか、光と影の境界をどこに置くかがポイント。
c. ダブルトーン:2階調化した表現の陽と陰のそれそれに一つの色を割り当て、配色によってそのモノのかたちを印象づける表現。同系色、補色、寒色と暖色、進出色と後退色など、組み合わせの工夫で様々なイメージを創り出せる。
今回は、そのおもちゃの特徴を最も表していると思われる角度からのシルエットを描き、そこからハイライト部分を取り除くことでシャドウ部分を表現、そのシャドウ部分を使ってダブルトーン表現にもっていく、という手順でいろいろスケッチを描いてみます。

step-4 作品化

さあ「これだ」というイメージが出来上がったら、いよいよ作品化です。3つの表現をA3ケント紙に美しくレイアウトして、時間内に作品に仕上げました。



配色については別の機会にしっかりやらないといかんナぁ。

step-5 振り返り

最後は恒例「プチ展覧会」で他の学生の作品を鑑賞、今日のポイントを再確認して終わりました。
今回の課題は、これまでの演習授業で学んできた「観察からかたちを導き出す」という活動の応用でした。そして、受講生の皆さんがデザイナーを目指す限り、この活動は永遠に続きます。
技法という視点では「かたちを描くための技法」の応用でもありました。遠近法、配色、べた塗り・・・。実は、これらを効率よく結果に結びつけるツールが、グラフィックソフトや3DCGソフトだったりします。
逆に今回の課題の応用として、公共の標識やアイコンなどに使われるピクトグラムがあります。世の中に、どんなイケているピクトグラムがあるか、目を凝らして探してみてください。

図:今日の活動をふりかえり中

背中を見せる

実はこの授業、教員も一緒に制作してます。美術系と違ってアナログ表現の経験値が少ない受講生たちに、どこまでやればいいのかをことばで説明しても伝わらないと感じるからです。
ちなみに今回は、何人かの学生にはポスターカラーのベタ塗りで、負けましたorz...(25年ぶりだもんなぁ、絵筆)。

2009年9月25日金曜日

09 第1回

オリエンテーション

さて、新しい授業が始まりました。視覚表現の基礎をこの授業でどこまで理解してもらえるか、不安です。が、踏ん張ってやっていきましょう。

知識と技術の相互作用

この授業の目的は、視覚表現を中心としたデザインのための基本的な考え方と技法を身につけることです。2年生の後半というタイミングで、これまで学んできた基礎的な知識と技を再度確認しながら、これから始める専門課程に向けた準備をする、そんな時間として位置づけてほしい。プロを目指す「卵」としての心構えを、ここでしっかり確認しておきたいと思っています。
ということで、この授業のルールを以下のように明示しておきます。
・手を動かしながら学ぶ(まず表現ありき)
・時間内に仕上げる(期限までに結果を出す)
・プロを目指す人が集まる場として振る舞う(暗黙のルール)
まあ、当たり前のことですが、今時の若者はマニュアルが無いと行動できない、という説もあるので、明文化しておくことにしました。

ついでにマナーも明文化しておくと、
・道具は自己管理
・自分で調べる
・ノートを取る
・ちゃんとやっている人の邪魔をしない
と、これも当たり前のことですが、100人を超える受講者が、それぞれちゃんと結果を出すにはお互いがお互いを甘やかさないことが、大前提でしょう。


うごくおもちゃのしくみを説明する


これまで3年生の前期に解説していた演習科目の内容を半分に分けて、その前半部分をこの授業で実施することにしました。それが、課題テーマです。
受講生の皆さんには、様々な切り口で「動き」や「しくみ」を静的な視覚表現としてデザインしてもらいます。
おもちゃを素材に様々な視覚表現を試みることで、最終的にはひとり10種類を超える「動くおもちゃのしくみを説明する」表現が出来上がるわけですね。


図:たとえばこんなおもちゃ、と例を紹介しているところ

授業プログラム裏話

この授業の準備に当たって、「今、学生たちに伝えるべきことは何か」を随分と悩みました。
・物語る力(妄想力)の不足
・表現への欲望の淡白さ
(手が動かない、一度そこそこできればそれで満足)
・造形表現の出発点とも言える「美しい」という価値に対する
 自己基準のなさ
このような今どきの学生クンたちに対する不安、不満をどう解消するか?
「漫才のネタを作って実演(楽しませるコミュニケーションの基本、体を使った表現)」「ひたすら色彩構成(バウハウスへの回帰、アナログ表現からの再出発)」「博物館などを題材にしたWS(コンテンツデザインの課題と可能性を現場で考える)」・・・など、100名を超える受講生に向けた演習授業としての現実性もふまえて、あれこれイメージングしてみましたが、結局、「やっぱり、インフォグラフィックスかな」というところに落ち着きました。

視覚表現の基本として、「メッセージをカタチに落とし込む」という単なるお絵描きではない、共有し解り合うための表現、の入り口を学生たちに発見してもらおうと思います。

来週からの授業をお楽しみに。